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2015.07.30
ダイエット(カロリー制限と運動)は、長期的にはほぼ成果なし
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目次
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- 失敗は必ずしも意思の弱さではない
- 長期的なダイエットの結果は?
- 認知的不協和
ダイエットというと運動と食事(カロリー)制限。
でもこの方法で、すんなり痩せたっていう人に余りお目にかからないですよね。
▼ブル中野さん(女子プロレスラー)も、ダイエットとリバウンドを繰り返されてたのですが、重度の膝の病気がきっかけで痩せることが必要となり、最終的に胃の切除手術を受けられたそうです(2015年6月23日「解決ナイナイアンサー」より)。ブル中野さんも「運動と食事制限では痩せない」と言われています。
▼お笑い芸人の杉ちゃんも、ビリーズブートキャンプで7キロ減量に成功した後、すぐに7キロリバウンドされたそうです。
今回は、従来のカロリーに基づくダイエットが、如何に効果がないのかということを、「瘦せたければ脂肪を沢山とりなさい」「人はなぜ太るのか」という2冊の本から紹介したいと思います。ほとんどが引用になりますがご了承ください。
1.失敗は必ずしも意思の弱さではない
(「瘦せたければ脂肪を沢山とりなさい」ジョン・ブリファ著より)
”肥満の原因についてはいろいろな意見があります。しかし結局のところ、問題の原因はカロリーの アンバランス、つまり摂取するカロリーが代謝と活動によって燃焼するカロリーを上回っているせいだ、という意見がよく知られています。体重問題の解決策は単純に、食べる量を減らして運動量を増やすことにより、そのバランスを回復することだ、という意見もよく聞かれます。
このアドバイスはもっともに思えます。
しかし困ったことに、このアドバイスを採用しても長期的にはたいして体重が減らないことが、大勢の人たちの経験だけでなく科学的研究からもわかっているのです。
ここで出てくるのはたいてい、従来のやり方で失敗する人は意志の力と自制心が足りないのだ、という話です。
しかし実際のところ、カロリーにもとづくダイエット戦略はうまくいかないだけでなく、ごく少数の人以外にはうまくいくはずがないのです。
食べる量を減らして運動量を増やすと、体が減量に抵抗し、そのうちに実は体重が増加しやすくなるおそれがあります。”
(ジョン・ブリファ. 2014.「瘦せたければ脂肪を沢山とりなさい」. Pages 21, 29.)
2.長期的なダイエットの結果は?
(引き続き「瘦せたければ脂肪をたくさん取りなさい」より引用)
“減量努力を始めてから2年以上、対象者をモニターしている研究に限定することで、従来の方法の 長期的成功を評価できます。食べる量を減らして運動量を増やすことによる 短期的な勝利については、わかっている人も大勢いると思いますが、ここで知りたいのは長期的な勝負のことなのです。
<研究1 >
平均年齢36歳、平均BMIが35.0の人たちに、低カロリー食(安定した体重を維持するのに必要な量より1日1000キロカロリー少ない食事)を指示。
一部の人はこの食事制限に加えて、運動として45分間のウォーキングを週に4~5回。
この介入を1年続け、介入終了から1年後、体重を測定しました。
長期(1年以上)の食事制限を始めてから2年後、平均減少体重はわずか2キロ程度です。 定期的な運動を加えても、体重減少は平均でたった約3キロです。
この結果は、多くの被験者の体重に照らすと、よけいに微々たるものに思えます。平均身長の人のBMIが35だとすると、体重は約101キロになります。この体重の人が、つらい食事制限と運動という投資の見返りとして2~3キロの減量に満足するとは、私にはとうてい思えません。
もうひとつ意外かもしれないのは、食事制限を補助するものとして用いられる運動が、減量という目的には役に立たないことです。先程の研究結果から、定期的に運動していた人たちの体重はたった1キロよけいに減っただけであることがわかります。” (P 30-32.)
(引用以上)
(「人はなぜ太るのか」ゲーリー・トーベス著より引用)
“タフツ大学(アメリカ、マサチューセッツ)の2007年のレビュー(1980年以降に医学雑誌に掲載された食事療法の試験に関連する論文の分析)によると、肥満および過体重の患者に対する低カロリー食の処方は、よくても「一過性」、つまり一時的な軽度の減量をもたらすだけである。
典型的な例では当初の6か月間に約4~4.5kgの減量となる。 しかし、1年後に体重は元に戻っていた。
また、今までで最も大規模な試験においてもこれに非常に近い答えが得られている。
その試験は、ハーバー ド大学およびルイジアナ州バトンルージュにある米国内で最も影響力のある学術的な肥満研究施設であるペニングトン生物医学研究センターに所属する研究者らによって行われた。
800人以上の過体重および肥満者を被験者として試験に登録し、4種類の食事群にランダムに割り付けた。4種類の食事は栄養成分(蛋白質、脂肪、炭水化物の割合)がわずかに違っていたが、1日あたり750キロカロリーという大幅な減食を前提としているという点では実質的に同じであった。
食事療法が続けられるよう”徹底的な行動カウンセリング”が行われた。これは減量しようとしたときに、決して受けることのないような専門家からの支援であった。また、カロリーが十分 に低くてもおいしい食事をつくれるように、被験者には2週間ごとに食事計画も与えられた。
試験開始時の被験者たちは平均約23kgの過体重であったが、試験中に平均でわずか約4kg減量しただけであった。
またタフツ大学のレビューで示されていたように、今回も約4kg減量の 大部分は当初の6か月に起こり、被験者の多くは1年後に元の体重に戻りつつあった。
少なく食べること、つまり減食はたとえ効果があったとしても数か月以上は続かないのだから、肥満がめったに治らなくても不思議はない。”(ゲーリー・トーベス. 2013.「人はなぜ太るのか」. Pages 44-5.)
3.認知的不協和
(引き続き「人はなぜ太るのか」より)
”しかし、このような現実がありながらも、専門家たちは減量法の推奨をやめたことがなく、そのような推奨を受けることは、心理学者たちが「認知的不協和」と呼ぶ、矛盾する2つの信念を同時に保とうと努力することから生じる葛藤をもたらすことになる。
たとえば、この分野で最も著名な3人の専門家、ジョージ・ブレイ 、クロード・ブシャール、および W.P.T.ジェームスが編集し、1998年に出版された教科書『肥満ハンドブック (Handbook of Obesity)』を見てほしい。
「食事治療は今なお治療の基本であり、エネルギーの摂取を減らすことは、減量成功の原則であり続ける」と記されている。
一方で、この記述の少し後には、そのようなエネルギーを制限した食事は「効果があまりなく、長続きしない」と書かれているのである。それでは、なぜそのような効果のないものが治療の基本になっているのか? 同書はその説明を怠っている。”(Page 45)