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2019.07.27

肥満は ”多因子疾患” だろうか?

目次

  1. 肥満は ”多因子性” だという見解
  2. 肥満はいろんな条件が重なって起こる

<まとめ>

1.肥満は ”多因子性” だという見解

肥満にはいろんな事が関係すると言われていますが、なぜでしょうか? 私がこのブログで言い続けている「相関性」とも関連する興味深い記述があったので引用します。

(「The Obesity Code」医学博士:ジェイソン・ファン著より引用)

体重が増える原因は何だろう?
これまで実に様々な説が提唱されてきた。

カロリー / 褒美としての食 / 糖分 / 精製された炭水化物 / 睡眠不足 / 小麦 / ストレス / 食物繊維不足 / 脂肪分 / 遺伝的性質/ 赤身肉/ 貧困 / 裕福さ / 乳製品 / 腸内細菌 / スナック / 子供の頃の肥満

こうした様々な説が飛び交い、あたかもが互いに両立することなく、肥満の真の原因はたった一つであるかのように争っている。例えば、最近、巷をにぎわせている「低カロリーダイエット」と「糖質制限ダイエット」をめぐる論争では、どちらかが正しければ、もう一方は間違っているだろうと考えられている。肥満に関する調査のほとんどは、こうした考えに基づいている。だが、この考え方は間違っている。なぜなら、どの説もいくらかの真実味を含んでいるからだ。[1]

(~略~)


おさらいだが、肥満は ”多因子的な疾患” である、ということを理解しないことが、決定的な間違いである。肥満の原因はただひとつではない。

カロリーが肥満を招く? 部分的にはそうだ。
炭水化物が肥満を招く? 部分的にはそうだ。
食物繊維は肥満を予防してくれる? 部分的にはそうだ。
インスリン抵抗性が肥満を招く? 部分的にはそうだ。
糖分が肥満を招く? 部分的にはそうだ。

これらすべての要因が、いくつかのホルモンの経路に作用することによって体重が増えるのであり、そうしたホルモンのなかで最も重要なのが「インスリン」だ。(注:この本の著者の考えであり、私の考えと異なる部分です。)(~略~)

      

私たちに必要なのは、様々な因子がどのように絡み合っているのかを理解するための枠組みであり、仕組みであり、筋の通った理論である。現在の肥満理論では、「真の原因は ただひとつで、そのほかのものは偽りの原因である」とされることがほとんどだ。結果として、議論が果てしなく続く。

「カロリーを摂り過ぎると肥満になる」
「いや、炭水化物を摂り過ぎるから肥満になるのだ」
「いやいや、原因は飽和脂肪酸の摂り過ぎだ」
「 赤肉の食べ過ぎだろう」
「いいや、加工食品の食べ過ぎだ」
「違うね、高脂肪の乳製品が原因だ」
「いや、小麦の摂り過ぎだ」
「いやいや、糖分の摂り過ぎだ」
「いや、外食がいけないんじゃないか」


・・・こうして、議論は尽きない。どの主張も、部分的には正しいのだから。
それぞれのダイエットは、別々の側面から肥満の解消に取り組んでいるだけで、どのダイエットにも効果はある。だが、どれも「肥満全体」に対する対処法ではないために長くは効果が続かないことに注意しよう。肥満が ”多因子性” のものであることを理解しないままでは、互いに非難しているだけで終わってしまう。[2](引用以上)

<参考文献>
[1]ジェイソン・ファン.「The Obesity Code (太らない体)」, 
サンマーク出版: 2019, Pages 130-1.
[2]Pages 360-1.

       
▽肥満の多因子性についての著者の指摘は鋭いと思う。
「消費するより多くのカロリーを摂取するから太る」というような単純なものではなく、いろんな要因が複雑に絡み合うということを私達はまず理解しないといけないのである。

しかし私が言いたいのは、私の腸内飢餓の理論を元にすると、いろんな要因はある程度集約できるということである。

どういう事かと言うと、肥満は目に見える部分においては多くの因子が複雑に絡み合っていて説明がつかないこともありますが、目に見えない『腸』の部分に目を向けると原因はかなり特定されると思っています。

2.肥満はいろんな条件が重なって起こる

まずおさらいですが、”太る”という言葉に2つの意味があるということを理解して下さい。多くの人が言う、「多く食べて太る」というのは、下図の(b)の部分です。
また、これまでの肥満に関する介入研究のほとんどは、摂取カロリーを減らすか、糖質・脂質の摂取量を調整したり、又は運動を増やしたりする比較研究だと思うのですが、彼らがやっている実験は、同じく(b)の部分です。

体重増加の2パターン

もちろん個人差はあれ、摂取カロリーを減らし、運動を取り入れれば、誰でもいくらかは痩せるであろう。

しかし、それは著者が言われるように、肥満に対する根本的な対処法ではないためにリバウンドはつきものという訳です。

それに対し、(a)の設定体重それ自体がアップするのは腸の飢餓のメカニズムであり、その時にいろんな要因がかかわってきます。
例えば、朝食抜き/ 遅い夕食/ 食事回数/ 精製された炭水化物/ ジャンクフード/ 食物繊維の摂取不足/ バランスの悪い食事、などは肥満の一因と言われますが、それは図の(a)の部分に関連することです。

  
ここで大切な事は、上記の因子1つ1つは肥満とは関連しているように見えても、両者の間に直接的に肥満を引き起こす『因果関係』がある訳ではありません。むしろ、これらは腸内飢餓に影響を与える因子であり、腸内飢餓が本来の原因(この場合、腸内飢餓が「交絡因子」と言えるかもしれない)であると考えます。

交絡因子

私が言いたいのは、これらいくつかの因子(条件)が組み合わさって腸内飢餓が起こるのであり、(目では見えないけども)7~8メートルもあると言われる腸全体(又は小腸)の部分においては、かなりの割合でピンポイントで決まると言えます。

【関連記事】→ 腸内飢餓をつくる(3要素+1)
               

まとめ

(1) 『The Obesity Code』の著者ジェイソン・ファン氏が言われるように、私達が太る原因だと信じている多くの要因は、それぞれが真の原因が1つであるかのように争っている。研究者は自分の研究分野(例えば、レジスタントスターチ、朝食を食べることの価値、糖質制限の効果、ホルモン、腸内細菌など)には精通しているかも知れないが、それは必ずしも肥満全体をとらえていないので、一つ一つの理論が一人歩きしてしまうことがある。

今私達に必要なのは、一つ一つの理論がどの様に絡み合うのかという枠組み(フレーム)であり、その点から、私の理論は役に立てると考えています。

 
(2) 肥満の根本原因は、「設定体重」の部分が高くなっていることであり、それは腸内飢餓によって引き起こされるのである。
腸内飢餓は少なくとも4つの要素が重なって起こり、「私達が何を食べるのか」「どの様に食べるのか(生活習慣)」はそのうちの重要な要素なので、多くの事が体重の増加に関係しているように見えるのである(腸内飢餓は「交絡因子」と言える)。

つまり、私達の見ることのできない腸の内部の動きに焦点をしぼると、体重増加の原因の多くは特定されると私は信じている。

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