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2021.05.12

親子の体型が似るのは遺伝か、それとも生活環境か?

目次

  1. 養子の体型は「生みの親」に似るのか、「育ての親」に似るのか?
  2. 別々に育てられた双子の体重は?
  3. 体重に変化を与える環境要因とは?(私の考え)
  4. 幼少期の体型が継続する? 
    <まとめ>

肥満は親から子供に遺伝するのでしょうか?
例えば、小学生の頃のクラスの同級生を思い出してみよう。

100%がそうではないにしても、両親が痩せていれば子供も痩せていることが多く、両親が太っていれば子供も太っていることが多い、というのはある程度想像できる。

ここで問題は、それが遺伝子によるものであるのか、それとも生活環境によるものなのかということである。そのような調査があったのでご紹介します。

1.養子の体型は「生みの親」に似るのか、「育ての親」に似るのか?

(「The Obesity Code」医学博士ジェイソン・ファン著)より引用

”肥満の子にはたいてい肥満の兄弟がいる。肥満の子どもは肥満の大人になり、肥満の大人は肥満の子どもをもつ。「子どもの頃に肥満だった人が、大人になっても肥満になるリスク」は高い。これらは、否定しようがない事実だ。(略)

肥満に悩む者がいる家族は、肥満に結びつく遺伝的な特性を共有している。だが、肥満が社会にまん延したのは1970年代に入ってからだ。人間の遺伝子が、これほど短期間に変化するはずはない。遺伝子が肥満の原因だとすれば、個人が肥満になるリスクについては説明がつくかもしれないが、全国的な肥満の増加の説明にはならない。

家族は同じ環境で生活する。同じようなものを、同じような頻度で、同じように食べる。 また、家族は車を共有し、肥満を誘発するような化学物質に同じようにさらされる。これらのことから「現在の生活環境が肥満の主な原因」だと考える人が多い。(略)

運動不足、食べ過ぎ

カロリーの摂り過ぎが肥満の原因だと考える従来の理論からすると、食べる量が増え運動量が減る、この『有毒な生活環境』こそがいけないのだと人々の暮らしを真っ向から非難することになる。実際に、私たちの生活習慣は1970年代からかなり変化している。(例:車、TV、PC、ファーストフード、砂糖、高カロリーな食べ物、など)

ゆえに、肥満に関する現代の理論では遺伝的な要素は勘案されないことが多く、主にカロリーの摂り過ぎが肥満につながると考えられている。「食べるのも運動するのも自発的な行動である。つまり遺伝的な要素はほぼ見当たらない」というわけだ。

では、本当に、人間の肥満に遺伝子はかかわっていないのだろうか?”
(ジェイソン・ファン. 2019. The Obesity Code. サンマーク出版. Pages 56-7.)

遺伝と環境的要因が肥満にどのような影響を与えているのかを調べるには、古典的な方法としては、「養子を迎え入れた家族」を研究してみるといい。

たいてい生みの親の情報は未公開であることが多く、研究者が容易に入手することはできない。だが幸いデンマークで、養子縁組に関する情報が比較的完全な形で残されており、双方の情報も記録されていた。そこでアルバート・J・スタンカード博士は、デンマークで養子になった540人の成人をサンプルとして取り上げ、それぞれ「生みの親」「育ての親」との比較を行った。

養父母

もし肥満に最も影響を与えているのが環境的な要因だとすれば、養子は養父母に似るはずで、逆に、もし遺伝的要素が最も影響を与えるのであれば、彼らは「生みの親」に似るはずである。

その結果、養父母と養子の体重に、相関関係は全く見られなかった。養父母が痩せていても太っていても、養子が大人になったときの体重に違いは出なかったのだ。とても太っている養子がとても痩せている養父母に育てられている事例もあった。(略)

一方、養子を生みの親と比べたところ、全く異なる結果がでた。こちらは双方の体重に一貫した相関関係が見られたのだ。生みの親は育児にほとんど、あるいはまったく関与しておらず、食事の大切さや運動の習慣を教えていない。それにもかかわらず、太っている両親の子供を、痩せている親のもとでで育てたケースでも、子供はやはり肥満になった。(略)

     
この発見は、研究者にとってかなり衝撃的だった。

カロリーに主眼をおいたそれまでの一般的な理論では、食習慣、ファーストフード、甘いお菓子、運動不足、車の普及、遊び場の不足などの「環境的要因と個人の行動」が肥満を助長する重大事項とされていた。だが、スタンカード博士は、「実際には、肥満と環境的要因は関係がない」という研究結果を打ち出した。"
(The Obesity Code. Pages 57-9.)

2.別々に育てられた双子の体重は?

"環境的な要因を見分けるのに有効な手法として、「別々の環境で育てられた一卵性の双子研究」もある。スタンカード博士は1991年、別々に育てられた一卵性・二卵性の双子と、一緒に育てられた一卵性・二卵性の双子について調査した。

双子姉妹

またしてもその調査結果は、肥満研究者たちに衝撃を与えるものだった。
肥満を決定づける要素のおよそ70%が遺伝によるもの」という結果が出たのだ。

(~略~)だが同時に、これだけ肥満が蔓延しているのは遺伝だけが要因ではないとも言える。肥満の発生率はこの数十年、比較的一定に推移してきた。それが1970年代から急激に広がっている。人間の遺伝子がそんな短期間に変化するはずがない。この矛盾はどう説明すればいいのだろうか?"
The Obesity Code. Pages 59-60.)

3.体重に変化を与える環境要因 とは(私の考え)

この調査では、生みの親と養父母のデータを比較できたということで、非常に興味深い調査であると思う。しかし、その結果だけで「遺伝子の影響が環境要因よりも大きい」と断言できるだろうか?

著者が言われるように、近年(1970年頃~)の肥満の増加は間違いなく、私達の生活環境の変化(私達が食べている物、不規則な生活)が影響しているといえるだろう。

育児疲れ

若い頃スリムであった人でさえ、ある年代から何か(一人暮らし、出産、子育て、仕事のストレスなど)をきっかけに10キロ、20キロと短期間に体重を増加させることがある。ダイエットに挑戦するたびに、体重が増加していく人もいる。
つまり食べ物や生活環境が変われば、体型も変わることがある、ということを私達は知っている。

ここで、体重に変化をもたらす『環境の変化』とは何だろうか?

この調査では、別の家庭で子供を育てること、又は双子が別々で暮らすことで、生活環境に変化があったと考えているのだが、この調査には問題がある。

養父母として子供を引き取るくらいの家であれば、ある程度は収入に余裕があり、ある程度バランスの良い食事を1日3回、子供に食べさすのではないだろうか?家庭によって献立や摂取カロリーは違うだろうが、多少食べるものが変化したくらいでは、それは、体重に変化をもたらす「環境の変化」とは言えない。
養父母が痩せているからと言って、同じ食事を摂れば痩せる訳ではないのである。

体重増加の2パターン

それとは逆に、体重・体型が大きくプラスに変化するのは、設定体重そのものがアップする時 (図-a) だと私は考えており、それは腸内飢餓によって引き起こされるのである。

そして、腸内飢餓の誘発には最低4つの条件が必要であるため、養父母と一緒に暮らしたからといって、設定体重を変化させる訳ではない。

【関連記事】腸内飢餓をつくる3要素+1

  

日本では過去数十年で、私たちの伝統的な食習慣が失われ、食事の西洋化や働き方の多様性が進んでいる。
その変化の中で、バランスの悪い食事(消化の良い炭水化物、加工食品、野菜不足など)と不規則な生活(朝食抜き、夜遅い食事など)が重なる時に腸内飢餓が引き起こされる可能性が高くなる。

これが私の言いたい、近年の肥満流行をもたらしている「環境的な要因と個人の行動」と言うべきものであって、遺伝的要因ももちろん否定できないが、環境的要因はかなり大きいと考える。

  
今や同じ家で生活する血のつながった家族であっても、同じ食べ物を、同じ時間に、同じ頻度で食べている訳ではない。
母親があえて別々のものを食べさすことはないだろうが、朝食を食べない子供、夜の遅いお父さん、好き嫌いで野菜などを食べない子供、昼を簡単に済ます主婦など、家族の中でも食べ方が多様化してきているのではないだろうか?

家族の中で一人だけ極端に肥満の子供なども数人見たことがあるが、それは私から言えば、同じ家族であっても体重に変化を与える『環境の変化』の結果と言えるだろう。

4.幼少期の体型が継続する?

ここで1つ注目すべきことは、幼少期(例えば3才~5才頃)の体型(痩せてたり、太っていたり)が大人になっても継続しやすいということだと思っている。小学1、2年の頃の同級生を思い出しても、太っていた女子・男子が(彼らは決して大食いではなかったが)、数十年経っても似たような体型であることが多い。

子供の肥満

私の理論から言えば、設定体重が変化していないということであり、この調査においても、設定体重に大きな変化をもたらす環境変化がないのであれば、子供の頃の体型などが基本的に優先されるのではないだろうか?

ただ、幼少期の体型(肥満・痩せ)が何によるものなのか?遺伝なのか、それとも離乳食を含めて、幼少期の食事の与え方なのかは疑問の残るところであった。

まとめ

(1) 遺伝と環境的要因が肥満にどのような影響を与えているのかを調べる「養子を迎え入れた家族」の研究では、養父母と養子の体重に、相関関係は全く見られなかった。一方、養子を生みの親と比べたところ、双方の体重に一貫した相関関係が見られた。また別々に育てられた双子における調査でも、「遺伝による影響がはるかに大きい」という結論に達した。


(2) 多くの研究者はそれまで「環境的な要因と個人の行動が近年の肥満の流行を招いた」として非難していたが、この調査では環境要因よりも遺伝がはるかに影響していると結論づけた。
しかし、私はこの調査には問題があると考える。子供が養父母の元で暮らすこと、又は双子が別々で育てられることは、必ずしも設定体重に変化を与える環境要因とは言えない。


(3)もちろん遺伝の影響は無視できないと思うが、近年の肥満の流行は、私達の食べている物や生活習慣の変化などが組み合わさって起こっていると考えます。体重や体型が大きくプラスに変化するのは、設定体重がアップする時であって、それは腸内飢餓によって起こる。


(4)設定体重に大きな変化がなければ、幼少期の体型が続くのではないかと私は考える。しかし幼少期の体型が何によって決まるのか?遺伝か、それとも離乳食を含めて幼少期の食事の与え方なのか、については疑問に思うところである。

         

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