トピックス

2023.09.09

「いつ食べるのか?」は大事だが、「何を食べるか」と組合わせて考えるべき(時間栄養学)

目次

  1. 時間栄養学とは?
  2. 近年の肥満増加と、食事のタイミングの重要性
  3. 私の考え

近年、ますます重要視されている「時間栄養学」ですが、その背景を簡単にまとめました。このブログの最後に、食事のタイミングと私の腸内飢餓理論との関係について説明したいと思います。

1. 時間栄養学とは?

(1) 地球上の生物は、地球の自転によって生じる24時間の明暗サイクルに活動を同調させている。この生物学的リズムは概日リズムと呼ばれ、"およそ1日 "を意味する。体内時計は生物の自然なタイミング装置であり、概日リズムの周期を調節している。近年の研究で、BMAL1、CLOCK、PER、CRYといった時計遺伝子が概日リズムの振動において中心的な役割を果たしていることが判明した[1]

(2) 体内時計には、2種類があります。視床下部の視交叉上核に存在し、光の合図を受け取る「中枢時計」と、全身の臓器や組織などに存在する「末梢時計」である。

光と闇のサイクルや食事摂取のタイミングなど、外部からの刺激は、中枢時計と末梢組織の代謝リズムをそれぞれ同調させるための日々のシグナルとなる。末梢時計は、中枢時計からの同調作用に加え、食事の摂取に大きく反応する[2]

(3)「時間栄養学」とは、生物学リズムと栄養の間の相互作用、およびこれらの要因と健康との関係を研究するものです。

時間栄養学には、エネルギーの分布、食事の頻度と規則性、食事時間の長さ、およびこれらの要因が代謝の健康と慢性疾患のリスクに対して及ぼす相対的な重要性が含まれます。一日の中の食事のタイミングが代謝の健康と一般的な幸福に大きな影響を与える可能性があることを示す研究証拠は増え続けている[3]

日本では、2008年に栄養・食糧学会で初めて「時間栄養学」という言葉が使われました。ダイエットに励む人ほど、朝から晩まで頑張って食べる量を減らそうとするが、食べ物やその栄養も摂る時間帯で効果や影響が大きく変わるのです[4]

2. 近年の肥満増加と、食事のタイミングの重要性

(1) 私達がいつ何を食べるかは、現代社会の中において大きく変化している。
朝食抜きや一日の遅い時間帯の食事など、タイミングを誤った食事パターンが概日リズムを乱し、肥満や関連する心代謝疾患の発症に関与しているという仮説が立てられている[5]

不規則な生活

(2) 一日の早い時間帯又は昼食に多くの割合のエネルギーを摂取する食事パターンは体重増加のリスクを減少させるという3.5 年に及ぶ追跡調査がある[6]
その一方、人における観察研究では、遅い時間帯にエネルギーの多くを摂取する食事では、報告されたカロリー摂取量や身体活動の違いでは説明できない高い肥満リスクと、食事療法などによる減量の成功率の低下と関連している[7]


(3) 2022年に発表された短期的研究(ランダム化比較クロスオーバー試験)においては、遅い食事が、空腹感を増大させ、代謝を低下させ、脂肪生成に関与する分子経路に変化を与えるとする報告があるが[8]、長期的にそれらが人を肥満にするかは依然として実証されていない。

夜勤

(4) これまでの観察研究から、エネルギー摂取量や活動に関連したエネルギー消費量の変化とは関係なく、食事のタイミング自体が体重に影響を及ぼす可能性が示唆される[9]

シフトワーカーや夜遅くに頻繁に食事を摂る集団に肥満リスクの増加が観察される背景には、エネルギー摂取量の乱れだけでは説明できない多面的なメカニズムがある可能性がある[10]
      

3. 私の考え

依然として、「一日の摂取カロリーの合計」が重要視される中で、同じ摂取カロリーであっても、「いつ食べるのか」の重要性が理解され出したのは大きな前進だと思います。そして、タイミング誤った食事が私たちの生物学的リズムを乱すというのは私自身の経験としても納得できるし、時計遺伝子の発見によって今後もこの分野の重要性は増していくと思っています。

実は私の腸内飢餓理論は、「概日リズム」や「時間栄養」とも関係しているのです。食事を摂ると、胃腸が活発に動き始めるからです。バランスの良い朝食や規則正しい食生活を続けると太りにくくなる理由や、不規則な食生活が肥満リスクの増加につながるのは、私の理論でも説明できるのです。


上記「2」で引用したように、いくつかの観察研究では「遅い時間など誤った時間帯の食事が、カロリーの摂取量の乱れだけでは説明できないような高い肥満リスクと関連している」との考察があるが、私はこのブログを通して説明している通り、
肥満自体がもともと摂取又は消費されるカロリー量とは直接関係ないと思っている。

食事とバイオリズム

消化の良い精製炭水化物やタンパク質、加工食品に偏るバランスの悪い食事は、不規則な食事のタイミングが重なれば腸内飢餓を引き起こしやすい。その典型的な時間的パターンが、 「朝食抜き」や「夜遅くの食事」 に代表されるのだ。

規則正しい時間帯の食事に戻しても肥満が簡単に治療できないとすれば、それは設定体重それ自体が高くなっているということを意味しています。

【関連記事】
偏食と不規則な生活が腸内飢餓をつくる(3要素+1)

つまり、「いつ食べるか」は大切だが、「何を、どの様に食べるか」も大切で、それらは常にセットで考えねばならないと思っている。カロリー摂取量だけにフォーカスすると、伝統的な食事スタイルや食事のバランス、の大切さを忘れてしまう場合があるのである。

:日本の何割かの栄養士は、「何を、いつ、どの様に食べるか」に加えて伝統的な日本の食事形態が健康の維持に大切であるかをしばしば強調するが、その点については全く同感である。)


「時間栄養」のカテゴリーにおいては、(1)朝食、(2)遅い夕食、(3)食べる回数、(4)不規則な食事、の4つの記事に分けて、私の腸内飢餓理論との関係性をより詳しく説明していきたいと思います。

【関連記事】バランスの良い朝食で、太りにくくなる理由
     

参考文献:
[1]”
What is a circadian rhythm?”, MEDICAL & BIOLOGICAL LABORATORIES CO., LTD.

[2] [3]Flanagan A et al., Chrono-nutrition: From molecular and neuronal mechanisms to human epidemiology and timed feeding patterns. J Neurochem. 2021 Apr;157(1):53-72. doi: 10.1111/jnc.15246. Epub 2020 Dec 10. PMID: 33222161.

[4]香川靖雄,「時計遺伝子ダイエット」, 2012, P.28-30. 

[5] [6][10]Davis R et al. The Impact of Meal Timing on Risk of Weight Gain and Development of Obesity: a Review of the Current Evidence and Opportunities for Dietary Intervention. Curr Diab Rep. 2022 Apr;22(4):147-155. doi: 10.1007/s11892-022-01457-0. Epub 2022 Apr 11. PMID: 35403984; PMCID: PMC9010393.

[7][8][9] Vujović N et al.,  Late isocaloric eating increases hunger, decreases energy expenditure, and modifies metabolic pathways in adults with overweight and obesity. Cell Metab. 2022 Oct 4;34(10):1486-1498.e7. doi: 10.1016/j.cmet.2022.09.007. PMID: 36198293; PMCID: PMC10184753.

メルマガ登録

メールアドレス  
※は必須項目です  

サイト内検索