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2022.07.15
アトキンス(糖質制限):体重減少の長期的な効果はいかに?
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<目次>
- アトキンスダイエットとは?
- 様々なダイエット法の比較試験
- アトキンス法の長期的な結果は?
- お米を食べるアジア人が痩せているのは?
- 私の考え
<まとめ>
1.アトキンス・ダイエットとは?
アトキンス・ダイエットとは、心臓病専門医であるロバート・アトキンス( Robert Atkins )が提唱した低炭水化物ダイエットの一種で、エネルギーとなる「糖質」を制限し、その代わりに「脂肪」をエネルギー源とするものです。初めの2週間は糖質を1日20~25グラムまでに制限し、その後、徐々に増やすことを特徴としています。
[The Obesity Code] の著者であるジェイソン・ファン氏によると、アトキンス博士は1963年当時100キロ近くあり、ニューヨークで心臓病専門医として働き始めたことをきっかけに彼自身が痩せる必要があった。しかし従来のカロリー制限ダイエットではうまく体重を減らすことができず、昔からある低炭水化物ダイエットを試したところ上手く行き、そこで患者にも勧めたそうです。
1972年には『アトキンス博士のダイエット革命』を出版し、この本は瞬く間にベストセラーとなった。
当時、米国医師会では依然として、食事中の高脂肪は心臓病や脳卒中を引き起こす原因と考えられており、高たんぱく・高脂質を許す「低炭水化物ダイエット」は受け入れられなかったそうだ。しかしそれをものともせず、1990年代から再燃した低炭水化物ダイエットの人気を背景に、アトキンスダイエットは一大ブームとなった。
2004年には、2600万人のアメリカ人が何らかの低炭水化物ダイエットをしていると答えている。[1]
2005年前後から、アトキンスダイエットと、かつて標準とされたダイエット法を比較する新しい研究が始まったそうですが、その結果はどうだったのでしょうか?詳しく見てみましょう。
この記事の最後に私の考えを述べたいと思います。
【関連記事】炭水化物が太るのか、カロリーが太るのか?論争
2.様々なダイエット食の比較試験
(【The Obesity Code 】 ジェイソン・ファン著, 2019年)より引用
"2007年には、『米国医師会雑誌』がより詳細な研究結果を掲載した。この研究では、 当時よく行われていた4つの異なるダイエット法の比較試験が行われた。その結果、ひとつのダイエット法の効果が抜きんでていた-アトキンスだ。
その他の3つ(脂質の摂取量を極めて低くする「オーニッシュ・ダイエット」、たんぱく質・炭水化物・脂質の割合を30:40:30にする「ゾーン・ダイエット」、標準的な「低脂質ダイエット」) は、体重の減少という点については似通った結果となった。
しかし、アトキンスをオーニッシュと比べると、アトキンス・ダイエットのほうは体重が減っただけでなく、全身の代謝もよくなったことが明らかになった。血圧、コレステロール値、血糖値もすべて、大幅に改善していた。
▽2008年に行われたDIRECT試験 (食事介入による無作為比較試験)で、アトキンスはごく短期間で体重を減らせることが、改めて確認された。
イスラエルで行われたこの試験では、「地中海食ダイエット」「低脂質ダイエット」「アトキンス・ダ イエット」の比較が行われた。
その結果、地中海食ダイエットには、体脂肪減少に大きな効果があるアトキンスと同じような効果が見られたが、AHA(アメリカ心臓協会)が標準とした低脂質ダイエットは、屈辱的な結果に終わった―嘆かわしい結果で、被験者は疲れ切ってしまったし、このダイエット法を好まなかった。このダイエット法を支持していたのは、医学研究者だけだった。"[2]
3.アトキンス法の長期的な結果は?
引き続き【The Obesity Code 】より
"アトキンス・ダイエットを長期にわたって研究したところ、長い目で見ると思ったほど効果が出なかったのだ(ダイエットは長い目で見なければいけない)。
テンプル大学のゲイリー・フォスター教授が2年にわたる研究の結果を公表したのだが、 その結果は、低脂質ダイエットをしたグループとアトキンス・ダイエットをしたグループ のどちらも体重は減少したが、その後、どちらもほとんど同じ割合で体重が元に戻ったというものだった。(略)すべてのダイエット法の試験に対して徹底的なレビューを行ったところ、低炭水化物ダイエットの利点のほとんどが、1 年後にはなくなっていたことがわかった。
「カロリー計算をする必要がないのでダイエットが長続きする」というのがアトキンス法の大きなウリのひとつだった。だが、食べる物を厳格に制限するアトキンス法 は、従来どおりカロリー計算をしながら食べる方法に比べても、決して簡単ではないことがわかった。
どちらのグループも、ダイエットが続いた期間は同じで、40%近くが1年以内にやめてしまっていた。
後から考えると、この結果はいくらか予想できた。アトキンス法は、ケー キ・クッキー・アイスクリーム、そのほかのデザートなど、甘いものを厳しく制限していた。(略)
どんなダイエット法を信じていようが、こうした食べ物を食べると太るのは明らかだ。 それでも私たちが食べるのをやめられないのは、甘いものを食べると気分がよくなるからだ。アトキンス・ダイエットはこのシンプルな事実を認めないがために、理論的には正しくても失敗してしまったのだ。
何百万人もの人がアトキンス法をやめ、新しいダイエット革命は、一時期だけ流行ったダイエット法のひとつに成り下がってしまった。アトキンス博士が1989年に設立した会社は、顧客離れにより多額の負債を抱え、倒産した。減量の恩恵は続かなかった。
だが、いったいなぜだ? 低炭水化物のダイエット法のもとになった原理は、「食品に含まれる炭水化物は血糖値を最も上げる」ということだった。血糖値が高いとインスリンの分泌量も増える。インスリンが増えることが、肥満の最大原因だ。 こうした事実は、十分に合理的に見える。いったい何がいけなかったのだろう?"[3]
4.お米を食べるアジア人が痩せているのは?
引き続き【The Obesity Code 】より
"炭水化物・インスリン仮説は「炭水化物が太るもとだ、なぜならインスリンが分泌されてしまうから」というもので、この説自体は間違ってはいない。だが、この説は不完全だ。様々な問題点が挙げられるが、「米を主食とするアジア人のパラドックス」が最も顕著な例だ。
ほとんどのアジア人は、少なくともここ50年、精白した米、つまり精製された炭水化物を主食とした食事をしている。それでも最近まで、 アジアの人々が肥満になるのは極めて稀なケースだった。
1990年代末に行われた調査では、日本の炭水化物摂取量 はイギリスやアメリカと類似しているが、糖分の摂取量ははるかに少ない。炭水化物の摂取量が多いにもかかわらず、中国と日本の肥満率は、つい最近まで非常に低い値だった。(略)
よって「炭水化物・インスリン仮説」は正しくないことになるが、ここには明らかに何か他の要因がある。炭水化物の摂取量だけが問題ではなかったのだ。
精製された炭水化物そのものよりも、「糖分」のほうがはるかに肥満の原因になっているのかもしれない。「食べるのが米か小麦かによって大きな違いが出る」という説も考えられなくもない。アジア人は米を食べることが多いが、西洋社会で食べる炭水化物は精製された小麦粉やトウモロコシ製品だ。(略)
これでは、パズルの肝心な1ピースが欠けたままだ。"[4](引用以上)
5.私の考え
お米か小麦かという話が出たので、まずこれについて少しお話したいと思います。
Dr. Fung氏が指摘されるように、炭水化物の量だけが問題ではない。お米か小麦かと言えば、お米の方が一般的に消化が悪いため、私の理論上は、小麦より太りにくいと言えるかも知れない。
近年の日本における肥満率の増加は、小麦製品も含む消化の良い炭水化物、バランスの悪い食事、不規則な生活リズムが大きな要因だと思っている。
そしてそれらは、私の腸内飢餓理論の「3要素+1」によって説明できると私は信じています。
(不規則な生活リズム)
<なぜアトキンスもリバウンドしたのか?>
これまでのどんなダイエット法でもリバウンドはつきものですが、リバウンドしないためには、設定体重(set-point weight) そのものを低くしないといけないと考えています。その方法については、以下の記事をご覧ください。
今回のリバウンドについて言うと、必ずしもアトキンスを含め「糖質制限ダイエットに効果がない」ということにはならないと思っています。正しく痩せるための方法としては一番近いと思っています。しかし、「血糖値・インスリン」にフォーカスしすぎると、もう一つの大事なポイントを見失ってしまうのです。
どういうことかと言うと、(この研究の詳細は分かりませんが)いくら糖質を厳しく制限しても、肉や脂質・野菜などの増やし方が足りないと、人によっては、結局カロリー制限ダイエットと似たように空腹を我慢することになり、その場合はこれまでのダイエット同様リバウンドする可能性があると考えています。
糖質制限ダイエットでは糖質を減らすことがポイントと言われますが、私は糖質を減らすと同時に、「肉・脂質・繊維質の野菜、乳製品など含めて消化の悪い食べ物をいかに増やすか」がむしろポイントだと思っています。そしてそれによって、空腹感が減り、吸収率を下げることが必要だと思っています(カロリーを気にして、油脂を減らさないこと)。
糖質を厳しく制限すれば、痩せるスピードは早まるでしょうが、スイーツなどの甘い物をそこまで厳格に禁止する必要もなかったのではないでしょうか?大切なのは無理せず、持続できることです。
<参考文献>
[1]ジェイソン・ファン.「The Obesity Code」, 2019, Pages 171-6.
[2]Pages 178-9.
[3]Pages 182-4.
[4]Pages 184-8.
まとめ
・1990年代の低炭水化物ブームの再燃をうけて、アメリカでは2000年代の初めに、アトキンスダイエットは一大ブームとなった。短期的に見れば、アトキンス法は体重が減っただけでなく、血圧、コレステロール値、血糖値などすべての数値が、大幅に改善していた。
・しかし、長期的な研究では、低脂質ダイエットなどと同様にリバウンドし、1年後には低炭水化物のすべての利点は失われていた。「炭水化物・インスリン仮説」は不完全な理論であり、多くの研究者がこの理論を捨て去る。炭水化物の量そのものが肥満を決定しているのではなかった。
・(私の考え)炭水化物の摂取量や、血糖値・インスリンだけが問題ではない。このアトキンス法のもう一つのポイントは、炭水化物以外の「消化の悪い食べ物をいかに増やすか」であると考える。私の言う、体重の設定値 に変化がない場合、基本的に元の食事に戻せばリバウンドは起こりうる。
2021.09.30
貧困層における、低栄養(痩せ)と肥満の共存は矛盾していない
目次
- 栄養不良と肥満の事例
- 私達はどうすればいいのか?
- 低栄養(低体重)と肥満の共存はありうる
大部分は本からの引用になりますが、最後に私の経験との関連について述べます。
【関連記事】→ 豊かだから太るのか、貧困が太るのか?
1. 栄養不良と肥満の事例
(「人はなぜ太るのか?」より引用)
同じ集団に存在する肥満と栄養不良、または低栄養(カロリー不足)の組み合わせは、今日の専門家たちが何か新しい現象であるかのように語るも のであるが、実はそうではない。80年前にはすでに1つの集団に栄養不足(低栄養)が肥満と共存している状態があったのである。
(ゲーリ・トーベス. 2013.「人はなぜ太るのか」. Page 32)
(1930年代:ニューヨーク,マンハッタン)
1934年、ヒルデ・ブルッフという若いドイツ人の小児科医が米国、ニューヨークに移住した。彼女はそこで肥満の子供の数に驚愕し、後に「肥満の子供たちが、診療所だけではなく、街頭、地下鉄、そして学校にあふれていた」と記している。
しかし、これは1930年代中頃のニューヨークでのこと。
今日私たち がファストフードと考えているケンタッキーマクドナルドの1号店が生まれる20年も前のことであり、 スーパーサイズ や高果糖のコーンシロップが登場する半世紀前だった。
さらに重要なことは、1934年は大恐慌のどん底であり、炊き出し、パンの 配給、そして空前の失業の時代であったことである。
米国の労働人口の4人に1人が失業者で、米国人の10人に6人が貧困状態にあった。ブルッフや仲間の移住者たちが、地域の子供たちの肥満の多さに驚かされたニューヨークでは、子どもの4人に1人が栄養不良といわれていた。こんなことがありうるだろうか?
ブルッフによれば、これらの子供たちが食べる量を減らして体重をコ ントロールしたり、少なくとも今までより食べる量を減らすことを考えながら人生を過ごしたにもかかわらず、結局、太ったままであったということはまぎれもない事実だった。(Pages 10-11)
(1930年代、スー族)
シカゴ大学の2 人の研究者が米国先住民の南ダコタに住むスー族を研究した。彼らは「住むのにふさわしくない」掘っ立て小屋に、しばしば1部屋に4~8人の家族が住む状況にあった。子ども32人を含む15家族は「おもにパンとコーヒー」で生活していた。これは私たちの想像を絶するほどの貧困である。
それにもかかわらず、現在、肥満の流行のまっただ中にある私たちの肥満率と彼らには大きな差がなかった。シカゴ大学の報告には、居留地の成人女性の40%、男性の25%、子どもたちの10%が「もれなく肥満と定義されるだろう」と記されている。
研究者の一人(フルデリカ)が「少なからぬ怠惰」 と呼んだ居留地での生活が彼らの肥満の原因であった可能性もあるが、研究者たちはスー族において別の関連する事実に注目した。
それは成人女性の5分の1 、男性の4分の1、 子供たちの4分の1が「極端に痩せていた」ことである。
居留地の食事の多くは政府の配給に頼っており、カ ロリーと蛋白質、必須ビタミン類とミネラルが不足していた。これらの食事の栄養不足の影響を見逃すわけにはいかない。研究者らは「統計をとったわけではないが、何気なく観察しただけでも、これらの家族の間で虫歯・O脚・ただれ眼・失明が高い頻度で存在することに気付かないわけがなかった」と報告している。(Page 31)
(ブラジル、サンパウロにて)
これは2005 年に医学雑誌に掲載されたジョンズホプキンス大学、栄養センター長である、ベンジャミン・カバレロの論文「栄養の矛盾-発展途上国における低体重と肥満」からの抜粋である。
カバレロはブラジル・サンパウロの スラム街にある診療所を訪問した経験を述べている。
彼は、待合室の様子について「慢性低栄養の典型的な症状を示す、痩せて発育を阻害された幼い子供を連れた母親たちであふれていた。発展途上国の貧しい都市部を訪れてこの光景に驚く人たちは、残念ながらほとんどいないだろう。しかし驚くなかれ、これら栄養不良の幼児を抱く母親たちの多くが肥満なのである」と記した。
もし私達が、母親たちの肥満は食べ過ぎが原因であると信じ、子供達がやせて成長が止まっているのは十分な食物を与えられていないからだと理解するなら、子供達の成長に必要なカロリー(栄養)を母親が余分に食べていたと仮定することになる。
言い換えれば、母親たちは、彼女たち自身が過食するために、子供たちを意識的に飢えさせようとしていたことになる。これは私たちが知る母性行動の すべてに反する。
カバレロは次にこの現象が示唆する問題点について、
「低体重(低栄養)と肥満の共存は公衆衛生上の計画に対する挑戦を突きつけており、それは低栄養を減らす計画の目的が、明らかに肥満予防の計画と相反するからである」と説明した。
簡単にいえば、肥満を防ごうと思えば、人々が食べる量を減らさなくてはならないが、低栄養を防ごうと考えれば、食物の供給を増やさなくてはならないということだ。私達はどうすればよいのか?(Pages 38-9)
2. 私達はどうすればいいのか?
(引き続き「人はなぜ太るのか?」より引用)
1970年代の初期、栄養学者と研究熱心な医師たちは、これらの貧しい集団における重度の肥満に関する観察を議論し、時にその原因について偏見なく論じた。
英国からジャマイカの糖尿病専門家へと転身したロルフ・リチャーズは1974年に(肥満と貧困に関し)「先進国での高い生活水準と比べて、西インド諸島に存在するような比較的貧しい社会に見られる高い肥満率を説明することは難しい。
これらの地域において栄養不良と低栄養 は生後2年間によくある異常で、ジャマイカの小児科病棟への入院のほぼ 25%を占める。低栄養は小児期初期から10代はじめまで続く。女性の集団では、肥満は25歳からはっきりと現れ、30歳以上では肥満率が非常に高くなる」と論じている。
リチャーズのいう「低栄養」は十分な食物がなかったことを意味する。生まれてから10代はじめまで、西インド諸島の子どもたちは極端にやせていて、成長は足踏みした。彼らにはより栄養のある食物ではなく、より沢山の食物が必要であった。
それから肥満が現れ、これは特に女性に顕著で、彼らが成年に達するにつれ急加速した。これは1928年にスー族で、またその後チリで観察された組み合わせで、同じ集団や同じ家族内で栄養不良と肥満が共存していた。
肥満を「一種の栄養失調」と呼ぶことに、道徳的判断、信条、過食と怠惰への遠回しな皮肉は込められていない。
それは単に食料供給に何か問題があるといっているだけで、私達にはそれが何なのかを突き止める義務があるのかもしれない。
同じ集団や家族の中でさえも起きる低体重と肥満の共存は、公衆衛生上の計画に対する挑戦を促すのではない。私達の肥満および過体重の原因に関する信念に対して挑戦状を突き付けているのである。
(Pages 38, 40)
3. 低栄養(低体重)と肥満の共存はありうる
<低栄養と肥満について>
まず、「低栄養と肥満は矛盾したメッセージではない」ということを私の経験に基づいて説明したいと思います。
繰り返しになりますが、私が30キロ台に激ヤセした中で、初めは高カロリーの食べ物をたくさん食べていたけど全く太ることができず、ある時、腸全体を飢餓状態にすれば太れるということに気が付いたんです。
一番飢餓状態を作りやすくするのが、消化の良い精製された炭水化物(ごはん、食パン、うどん、デンプンなど)と良質のタンパク質を少しだけ食べること(そして、その他の物を食べないこと)でしたが、エネルギーやその他の体に必要な栄養が不足してフラフラになっていました。
逆にミネラルやタンパク質などの栄養を補うために牛乳や卵、野菜、豆、小魚などの食品を摂ると、栄養の状態は一時的に回復しましたが、それと同時に、それ以上太ることもありませんでした。私の場合は消化できなかったからです。
つまり食事に対する、消化の良い精製炭水化物の比率が高いほど(量ではない)、繊維質の野菜や脂質、その他の消化の良くない食品が少ないほど、腸内飢餓が起こりやすく、設定体重がアップする可能性があります。
ビタミンやミネラルの欠乏によって病気が引き起こされるというのは確かに考えられますが、低栄養と肥満は矛盾したメッセージではないのです。
<低体重と肥満の共存について>
またカバレロ氏の言及された『貧困層での低体重と肥満の共存』について説明すると、同じグループで同じものを食べたとしても、体の中においては異なる結果になる場合があります。
腸の中ですべて消化した人は、私の腸内飢餓 理論により設定体重が徐々にアップし、最終的に肥満になるかもしれません。
しかし、同じように食べたとしても、すべて消化できなかった人は低栄養で痩せたままです。ほんの少しの消化されない食べ物が腸内に残るだけで、腸内飢餓は起きにくくなるのです。(特に、極端な痩せの状態は消化する能力まで低下させるので、腸内飢餓を引き起こすのがさらに難しくなる。)小さな違いが時に大きな結果の違いにつながります。
▽また現代に当てはめると、それは私達の社会で起こっている現象と同じではないでしょうか?
ある人がそれほど食べないのに太っている場合、その人は運動不足か代謝が低いと考えられがちです。また、多く食べても痩せている人を見ると、その人は動いてエネルギーを消費しているか代謝がいいと考えがちです。多くの研究者は、何らかの理由をつけて「太る原因は、食べ過ぎているか身体的な不活発である」という理論に当てはめようとしているだけです。
しかし先入観を捨ててこれらを見ると、同一グループにおける「痩せと肥満の共存」と同じ現象であると言えるでしょう。肥満・過体重は必ずしも過食の結果ではないのです。
2021.05.12
親子の体型が似るのは遺伝か、それとも生活環境か?
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目次
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- 養子の体型は「生みの親」に似るのか、「育ての親」に似るのか?
- 別々に育てられた双子の体重は?
- 体重に変化を与える環境要因とは?(私の考え)
- 幼少期の体型が継続する?
<まとめ>
肥満は親から子供に遺伝するのでしょうか?
例えば、小学生の頃のクラスの同級生を思い出してみよう。
100%がそうではないにしても、両親が痩せていれば子供も痩せていることが多く、両親が太っていれば子供も太っていることが多い、というのはある程度想像できる。
ここで問題は、それが遺伝子によるものであるのか、それとも生活環境によるものなのかということである。そのような調査があったのでご紹介します。
1.養子の体型は「生みの親」に似るのか、「育ての親」に似るのか?
(「The Obesity Code」医学博士ジェイソン・ファン著)より引用
”肥満の子にはたいてい肥満の兄弟がいる。肥満の子どもは肥満の大人になり、肥満の大人は肥満の子どもをもつ。「子どもの頃に肥満だった人が、大人になっても肥満になるリスク」は高い。これらは、否定しようがない事実だ。(略)
肥満に悩む者がいる家族は、肥満に結びつく遺伝的な特性を共有している。だが、肥満が社会にまん延したのは1970年代に入ってからだ。人間の遺伝子が、これほど短期間に変化するはずはない。遺伝子が肥満の原因だとすれば、個人が肥満になるリスクについては説明がつくかもしれないが、全国的な肥満の増加の説明にはならない。
家族は同じ環境で生活する。同じようなものを、同じような頻度で、同じように食べる。 また、家族は車を共有し、肥満を誘発するような化学物質に同じようにさらされる。これらのことから「現在の生活環境が肥満の主な原因」だと考える人が多い。(略)
カロリーの摂り過ぎが肥満の原因だと考える従来の理論からすると、食べる量が増え運動量が減る、この『有毒な生活環境』こそがいけないのだと人々の暮らしを真っ向から非難することになる。実際に、私たちの生活習慣は1970年代からかなり変化している。(例:車、TV、PC、ファーストフード、砂糖、高カロリーな食べ物、など)
ゆえに、肥満に関する現代の理論では遺伝的な要素は勘案されないことが多く、主にカロリーの摂り過ぎが肥満につながると考えられている。「食べるのも運動するのも自発的な行動である。つまり遺伝的な要素はほぼ見当たらない」というわけだ。
では、本当に、人間の肥満に遺伝子はかかわっていないのだろうか?”
(ジェイソン・ファン. 2019. The Obesity Code. サンマーク出版. Pages 56-7.)
”遺伝と環境的要因が肥満にどのような影響を与えているのかを調べるには、古典的な方法としては、「養子を迎え入れた家族」を研究してみるといい。
たいてい生みの親の情報は未公開であることが多く、研究者が容易に入手することはできない。だが幸いデンマークで、養子縁組に関する情報が比較的完全な形で残されており、双方の情報も記録されていた。そこでアルバート・J・スタンカード博士は、デンマークで養子になった540人の成人をサンプルとして取り上げ、それぞれ「生みの親」と「育ての親」との比較を行った。
もし肥満に最も影響を与えているのが環境的な要因だとすれば、養子は養父母に似るはずで、逆に、もし遺伝的要素が最も影響を与えるのであれば、彼らは「生みの親」に似るはずである。
その結果、養父母と養子の体重に、相関関係は全く見られなかった。養父母が痩せていても太っていても、養子が大人になったときの体重に違いは出なかったのだ。とても太っている養子がとても痩せている養父母に育てられている事例もあった。(略)
一方、養子を生みの親と比べたところ、全く異なる結果がでた。こちらは双方の体重に一貫した相関関係が見られたのだ。生みの親は育児にほとんど、あるいはまったく関与しておらず、食事の大切さや運動の習慣を教えていない。それにもかかわらず、太っている両親の子供を、痩せている親のもとでで育てたケースでも、子供はやはり肥満になった。(略)
この発見は、研究者にとってかなり衝撃的だった。
カロリーに主眼をおいたそれまでの一般的な理論では、食習慣、ファーストフード、甘いお菓子、運動不足、車の普及、遊び場の不足などの「環境的要因と個人の行動」が肥満を助長する重大事項とされていた。だが、スタンカード博士は、「実際には、肥満と環境的要因は関係がない」という研究結果を打ち出した。"
(The Obesity Code. Pages 57-9.)
2.別々に育てられた双子の体重は?
"環境的な要因を見分けるのに有効な手法として、「別々の環境で育てられた一卵性の双子研究」もある。スタンカード博士は1991年、別々に育てられた一卵性・二卵性の双子と、一緒に育てられた一卵性・二卵性の双子について調査した。
またしてもその調査結果は、肥満研究者たちに衝撃を与えるものだった。
「肥満を決定づける要素のおよそ70%が遺伝によるもの」という結果が出たのだ。
(~略~)だが同時に、これだけ肥満が蔓延しているのは遺伝だけが要因ではないとも言える。肥満の発生率はこの数十年、比較的一定に推移してきた。それが1970年代から急激に広がっている。人間の遺伝子がそんな短期間に変化するはずがない。この矛盾はどう説明すればいいのだろうか?"
(The Obesity Code. Pages 59-60.)
3.体重に変化を与える環境要因 とは(私の考え)
この調査では、生みの親と養父母のデータを比較できたということで、非常に興味深い調査であると思う。しかし、その結果だけで「遺伝子の影響が環境要因よりも大きい」と断言できるだろうか?
著者が言われるように、近年(1970年頃~)の肥満の増加は間違いなく、私達の生活環境の変化(私達が食べている物、不規則な生活)が影響しているといえるだろう。
若い頃スリムであった人でさえ、ある年代から何か(一人暮らし、出産、子育て、仕事のストレスなど)をきっかけに10キロ、20キロと短期間に体重を増加させることがある。ダイエットに挑戦するたびに、体重が増加していく人もいる。
つまり食べ物や生活環境が変われば、体型も変わることがある、ということを私達は知っている。
▽ここで、体重に変化をもたらす『環境の変化』とは何だろうか?
この調査では、別の家庭で子供を育てること、又は双子が別々で暮らすことで、生活環境に変化があったと考えているのだが、この調査には問題がある。
養父母として子供を引き取るくらいの家であれば、ある程度は収入に余裕があり、ある程度バランスの良い食事を1日3回、子供に食べさすのではないだろうか?家庭によって献立や摂取カロリーは違うだろうが、多少食べるものが変化したくらいでは、それは、体重に変化をもたらす「環境の変化」とは言えない。
養父母が痩せているからと言って、同じ食事を摂れば痩せる訳ではないのである。
それとは逆に、体重・体型が大きくプラスに変化するのは、設定体重そのものがアップする時 (図-B) だと私は考えており、それは腸内飢餓によって引き起こされるのである。
そして、腸内飢餓の誘発には最低4つの条件が必要であるため、養父母と一緒に暮らしたからといって、設定体重を変化させる訳ではない。
【関連記事】腸内飢餓をつくる3要素+1
日本では過去数十年で、私たちの伝統的な食習慣が失われ、食事の西洋化や働き方の多様性が進んでいる。
その変化の中で、バランスの悪い食事(消化の良い炭水化物、加工食品、野菜不足など)と不規則な生活(朝食抜き、夜遅い食事など)が重なる時に腸内飢餓が引き起こされる可能性が高くなる。
これが私の言いたい、近年の肥満流行をもたらしている「環境的な要因と個人の行動」と言うべきものであって、遺伝的要因ももちろん否定できないが、環境的要因はかなり大きいと考える。
今や同じ家で生活する血のつながった家族であっても、同じ食べ物を、同じ時間に、同じ頻度で食べている訳ではない。
母親があえて別々のものを食べさすことはないだろうが、朝食を食べない子供、夜の遅いお父さん、好き嫌いで野菜などを食べない子供、昼を簡単に済ます主婦など、家族の中でも食べ方が多様化してきているのではないだろうか?
家族の中で一人だけ極端に肥満の子供なども数人見たことがあるが、それは私から言えば、同じ家族であっても体重に変化を与える『環境の変化』の結果と言えるだろう。
4.幼少期の体型が継続する?
ここで1つ注目すべきことは、幼少期(例えば3才~5才頃)の体型(痩せてたり、太っていたり)が大人になっても継続しやすいということだと思っている。小学1、2年の頃の同級生を思い出しても、太っていた女子・男子が(彼らは決して大食いではなかったが)、数十年経っても似たような体型であることが多い。
私の理論から言えば、設定体重が変化していないということであり、この調査においても、設定体重に大きな変化をもたらす環境変化がないのであれば、子供の頃の体型などが基本的に優先されるのではないだろうか?
ただ、幼少期の体型(肥満・痩せ)が何によるものなのか?遺伝なのか、それとも離乳食を含めて、幼少期の食事の与え方なのかは疑問の残るところであった。
まとめ
(1) 遺伝と環境的要因が肥満にどのような影響を与えているのかを調べる「養子を迎え入れた家族」の研究では、養父母と養子の体重に、相関関係は全く見られなかった。一方、養子を生みの親と比べたところ、双方の体重に一貫した相関関係が見られた。また別々に育てられた双子における調査でも、「遺伝による影響がはるかに大きい」という結論に達した。
(2) 多くの研究者はそれまで「環境的な要因と個人の行動が近年の肥満の流行を招いた」として非難していたが、この調査では環境要因よりも遺伝がはるかに影響していると結論づけた。
しかし、私はこの調査には問題があると考える。子供が養父母の元で暮らすこと、又は双子が別々で育てられることは、必ずしも設定体重に変化を与える環境要因とは言えない。
(3)もちろん遺伝の影響は無視できないと思うが、近年の肥満の流行は、私達の食べている物や生活習慣の変化などが組み合わさって起こっていると考えます。体重や体型が大きくプラスに変化するのは、設定体重がアップする時であって、それは腸内飢餓によって起こる。
(4)設定体重に大きな変化がなければ、幼少期の体型が続くのではないかと私は考える。しかし幼少期の体型が何によって決まるのか?遺伝か、それとも離乳食を含めて幼少期の食事の与え方なのか、については疑問に思うところである。
2020.07.07
食べたり食べなかったりする人は、徐々に太りやすくなる
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目次
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- ダイエット・リバウンドを繰り返す人
- "コロナ太り" という人達
- 「昨日食べ過ぎたから、今日は食事を抜く」 の間違い
- 徐々に太りやすくなる人がやっている日々の行動
【関連記事】→「少ししか食べてないのに太る、とはどういうことか?」
1.ダイエット・リバウンドを繰り返す人
平成28年のFMラジオの放送になりますが、清水翔太さんが出演されていました。
翔太さん:「いや、僕ね凄く "太りやすい体質" なんですよ。お菓子とか食べてると、あっという間に2kgくらい太っちゃって・・・」
司会者:「そうなんですか?その為にやっていることは何ですか?」
翔太さん:「ダイエット、つまり食べないことです。あと、それと運動と・・1~2週間したら、元に戻りますね」
私のブログを読み続けて頂いている方なら、私が何を言いたいのかお分かりかと思いますが、これを「太りやすい体質」というのは間違いです。運動して ”元に戻っている” のではなく、食べて太ったときに ”元に戻っている” のです。”痩せた” のは体重を「絞る」という行為(ボクサーの減量と同じ)です。
2. ”コロナ太り” という人達
(2020年)ある調査によると、コロナウィルスの感染拡大防止のための Stay home(外出自粛)期間に太ったという方が50%以上もいるそうです。(逆に、何割かの痩せた人もいる)
テレビの情報(NHK:「鶴瓶の家族に乾杯」)ですが、あるダンスのインストラクターはこの期間に10キロ以上も太ったそうです。
また私の友人の料理人(和食店経営)も、3キロ以上太りました。彼は普段は朝食もたべず、夜も11時頃に営業終了したら、あまり食べないようにしていたそうですが、この自粛期間は実家でテレビを見て、食べてゴロゴロしていたようです。
この2人の例は「動かなくなり、多く食べると太ってしまう」という典型的な例だと思います。
普段は、仕事の緊張感があり一日中動いており、食事にも気を配り控えめに食べていた。その緊張感がなくなり、運動量が単純に減って、食べる量が増えれば当然体重は増えます。
しかし、それはリバウンドと同じ、設定体重に戻るというパターンです(図ーA)。
3."昨日食べ過ぎたから、今日は食事を抜く" の間違い
「昨日、食べ放題(ビュッフェ)で食べすぎて、一晩で3キロ太った」なんて話もたまに聞きます。
単純に体脂肪がついた分もあるだろうし、食材の胃袋に入っている重量分もあるでしょうが、だからと言って「よし、今日は食事を抜こう」というのは間違いです。
昨日に摂取した食べ物(カロリー)は既に腸を通り過ぎ、便として排出されるのに、今日食べることを我慢すれば、腸内飢餓を引き起こし、長い目で見ると設定体重はアップしていくこともあります。
昨日に摂取したカロリーと、今日摂取するカロリーを相殺しても意味がないのです。
4.徐々に太りやすくなる人がやっている日々の行動
昨今のグルメブームで、美味しそうな食べ物が数多くテレビやSNSで紹介される一方、多くの人が太ることを気にしてダイエットに取り組んでいます。
多くの人は普段はできるだけ食べたい物を我慢し、カロリーの高いスイーツや揚げ物を控える。そしてたまにご褒美に好きなものを食べるのです。
そして一時的に太ってしまった体重を後悔し、「また明日から頑張ろう」と言わんばかりに、”制限系のダイエット” に取り組むのです。
こういうダイエットはほとんど成功しません。
むしろ徐々に太りやすくなる傾向があると考えます。食べたり食べなかったり、ムラのある食生活が「太りやすい体質」となる一歩なのです。
カロリー・糖質の摂取量を減らすために、食事を抜いたり、軽い食事ですませば、あなたは空腹を長時間我慢することになります。それによって一時的に体重を減らしたとしても、油脂や乳製品・繊維質の野菜まで不足すれば、長い目で見ると、腸内飢餓を引き起こし設定体重がアップしていく場合があります。
知らず知らずのうちに、あなたの体重の設定値はアップし、ある時以前の様に食べると、最高体重を更新していたということもあるかも知れません。そして体重が落ちにくくなります。
腸のリズムは朝食で始まり、食べたものは(個人差もあるが)、20時間前後~数十時間で直腸まで送られるために、「昨日食べ過ぎたから、今日は抜く」「2日前に繊維質の野菜は沢山食べたから、今日はいらない」というのは間違いです。
また消化の良すぎる炭水化物と肉などの組み合わせなら7~8時間でも完全に消化されてしまうので、「夜に野菜や栄養のある物を沢山食べるから、朝・昼は軽く質素にすます」というのも良くありません。
太りにくい体になるためには、毎日3回、規則正しくバランスの良い食事を摂るようにすることが、まず第一歩です。
カロリーや糖質のトータルを減らしたくても、多様な食品群からバランス良く摂ることを心掛けましょう。
まとめ
(1) コロナの自主隔離期間に「数キロ太った」と言う人がいるが、ほとんどの場合は、ダイエット後のリバウンドと同じように設定体重に戻るメカニズムで説明できると考える。
(2) 「昨日摂り過ぎたカロリーを、今日は少なく食べて調整する」という考えは、体重を長期的に安定的に保つうえでは間違いである。
(3) 普段はダイエットで食べたい物を我慢して少なく食べ、たまにご褒美的に贅沢するという食べ方も、長い目で見ると太りやすくなる。食べたり食べなかったりという不規則な食べ方は、空腹を我慢しているときに腸の飢餓状態を引き起こし、知らず知らずのうちに、設定体重がアップしていく可能性があるのである。
(4) 腸のリズムは基本的に朝食で始まり、食べた物は20時間前後で直腸まで到達するので、太りたくなければ、毎日バランスの良い食事を3回食べるのが大切である。
2020.05.06
胃下垂の人が太らない、本当の理由
目次
- 胃下垂とは?
- なぜ胃下垂だと太りにくいのか?
1.胃下垂とは?
日本人には胃下垂(いかすい)の人が多いと言われています。
『胃下垂』とは、胃が正常な位置より常に下がっている状態をいい、お腹の壁の脂肪不足や内臓を支える筋肉が低下している痩せ型の人におこると言われています。
症状としては、胃部膨満感や、少量の食事でも満腹感を感じたり、食後の胃のもたれやむかつきを感じることがあります。
私もひどい胃下垂です。普通の人なら、食べるとヘソの上部のお腹が膨れると思いますが、私の場合は、食事をすると骨盤の下がプクッと膨れます。私は、中学生まではガッチリ体型でしたが、バカほど食べ過ぎて痩せた為、胃腸を支える脂肪や筋肉まで減少し、食べた物の重みで胃が垂れ下がったのだと思います。
女子の中には、沢山食べても太らないから「胃下垂になりたい」という人もいるようですが、なぜ胃下垂になると太るのが難しいのか、ということを説明します。
2.なぜ胃下垂だと太りにくいのか?
医師の中には、「痩せているから胃下垂になるのであって、胃下垂だから痩せている(太れない)のではない」と言う方もいます。
しかし、これは完全に間違いです。私に言わせると、「痩せすぎると胃下垂になりやすいし、胃下垂だから太りにくい」と言えます。つまり悪循環というやつです(「絶対的に太らない」という訳ではない)。
▽なぜ太りにくいのかという理由は、私の 『腸内飢餓理論』で説明できます。
胃の蠕動(ぜんどう)運動が低下し、消化が遅れ、食べた物が胃の中に残りやすくなります。痩せすぎの人(症状の重い人)は消化する力も弱いので、胃もたれや満腹感が常にある場合があります。
そして、結果的に腸の中に未消化の食べ物が24時間通して残りやすくなります。
十分に消化できず吸収が低下するというのもあると思いますが、腸の中に常に未消化の食べ物が残る状態では、私の言う、設定体重 (set-point weight)がアップすることはなく、腸の広範囲に渡り未消化の食べ物がある状態は、むしろ痩せる方向に働くのです。
胃下垂で痩せている人が、少しでも太るために、カロリーの高い揚げ物やクッキー、ケーキなどを食べるのは、さらに胃への滞留時間を長くするために逆効果です。
消化がよく栄養のある物を食べ、腹筋などの運動をしていくことで脂肪や筋肉がつき、胃下垂が改善する場合があると考えます。